【りぶねす~12巻感想】絶対に、主人公に感情移入してはダメな漫画
最終巻までのネタバレ全開なので注意してくださいm(_ _)m
高校生の兄妹 + 幼なじみが織りなすラブコメ漫画「りぶねす」1〜12巻(最終巻)を読了。
出典:りぶねす コミックス1巻表紙
一言で感想を言うと、
恋愛系コメディ漫画として必須の"3大要素"を完璧に満たしている傑作でした(男目線)。
- 主人公に好感を持てて、感情移入しやすい(なりきって読むと気持ちがいい)
- ヒロイン達が、作画だけでなくキャラ立ち含めて全員漏れなく可愛い
- 展開のクソ面白さ
間 違 い な く 面白かったです。
高校生の兄と妹+幼なじみとか「今時そんな設定!?」ってくらい使い古された設定っぽいですが、ところがどっこい。
一度も読み止まることなくあれよあれよと一気読みするくらいには面白かった。
「この先どうなるんだ.....???」と気になって仕方なかった。
完結した後に読んでよかったです。
これ、完結してなかったら続きを待つのが地獄でしたね。
これまでラブコメ漫画は多く読んできているけど、過去最大級に脳みそ/感情をガックガク揺さぶられました。
このほがらかで可愛らしい漫画表紙以上の破壊力があります。
読了後、心のうちにうごめいている感情が出口を求めて暴れているので、漫画感想記事として吐き出してみる。
・・・・・・・・・・・
繰り返します!
これより下は、最終巻までのネタバレ全開です!
・・・・・・・・・・・
ー もくじ ー
「りぶねす」感想:こんな重く苦しい気分になる展開だとは...
ぶっちゃけ、この漫画をナメてました。
1巻を読み始めた時は、
ははーん、この可愛らしい絵柄、妹+幼馴染の典型的な設定。
あかる〜いゆる〜い感じで頭空っぽで読んでOKな、俺の大好物なラブコメ漫画だな?
って思ってました。
ところが。
6巻以降のぼく↓
え......
まさか...妹ちゃん(カスミ)と七瀬がくっついたりしねぇよな...?
え、え、え、え、え、え、マジで!?
そこがくっついちゃうの!?
・・・
うわぁそんな絵面見たくねぇよぉもう先読みたくねぇよぉ...(1日何もやる気が起きない)
ボディブローで徐々に徐々に弱らされていく感覚......。
自分が最初に予想した路線に対し、ここまで強烈に裏をかいてきた漫画は初めてです。
まさかカスミ×モブのカップリングは予想してなかった
りぶねす1巻序盤の、主人公テツが荒唐無稽で破天荒なキャラ全開な感じや、幼なじみのアスカがコメディ系にありがちな「素直じゃない暴力系女子」の描写などから、
「ドタバタギャグ系強めの妹モノラブコメ」かと思っていました。
「コメ」は強く描きながらも決して「ラブ」へは踏み込みすぎない的な。
終着点は「テツは家族として妹の存在が最優先、幼なじみとは付き合わないけど3人の仲良しな関係はこれからも続いていく〜」的な。
ところがどっこい・・・
まさかカスミがモブキャラの七瀬とくっついてしまうなんて...
展開が予想外でキツすぎるよ!!
読むのツラすぎたよ(半ギレ)!!
読み終わったその日は軽く鬱になって何も手につかなかったレベル。
カスミが七瀬に対して好意をチラ見せするたびに、
は?いやいやいやwww
いやいやいやいやwww
と胃のムカムカが突き上げてくるような感覚になりました。
あの可愛らしい漫画表紙から、肉体の状態に影響を与えるレベルの精神ストレスを与える話になることを誰が想像できようか。
七瀬が登場して物語に絡み始めた時も、カスミは葛藤を見せつつ最後には「今は家族である兄との時間が大切」って理由で振るんでしょって思ってました。
そういう方向性の妹系漫画だよねって。
ツライ過去を持ちつつ克服してきた家庭環境がつちかってきたテツとカスミの"特別な兄妹"という関係性から、カスミが「兄が大切だから、ごめんなさい」って言い切っても気持ち悪くなることはなかった。
だって、テツもカスミもお互いを妹・兄と認識していて、(昨今ありがちな)恋愛感情なんてこれっぽっちもなかったので。
主人公は血の繋がった妹と恋愛関係になるなんてものは望んでいないので正確には"NTR展開"ではないですが、全くゆかりのないポッと出野郎・七瀬にかっさらわれることになるなんて最初の数巻では思いも至らず...。
七瀬、お前だけは好きになれねぇよ...
なぜ、ぼくは七瀬が大大大嫌いなのか
七瀬以前に、そもそもぼくはカスミというキャラ自体そこまで好きではありません。
聖・光属性が強すぎるというか、世の汚れを知らなすぎ・超良い子すぎてどちらかというと苦手。
やはり人間、闇の部分まで含めて魅力だと思うのです。
なので「こんな可愛いメインヒロインのカスミに彼氏なんてけしからん!」という心情から七瀬が嫌いになっているわけではありません。
七瀬がクッソ嫌いな理由、考えてみるとそれは3つ。
- 100%主人公テツの立場・目線になりきって読んだから
- 七瀬のテツに対する口のきき方が不愉快だから
- テツと七瀬が上手くやれる未来が見えないから(カスミは幸せなのか?)
1. 100%主人公テツの立場・目線になりきって読んだから
もう完全にコレですね。
テツへの感情移入。
漫画やラノベを読むとき、「お、この主人公良いなぁ」と思える人には自分の意識を投影しながら読んでしまうのです。
カッコいい主人公になりきりたいのです。
ぼくだけでなく、多く男子読者が「妹(カスミ)を大切に守りつつ可愛がるお兄ちゃん」になりきってりぶねすを読んでいるのではないかと。
一方、Amazonのレビューを見ると「七瀬が良いやつで良かった」的なコメントがありました。
こういう見方ができる人はおそらく自分を主人公に投影することなく、客観的な視点で漫画を読んでいるのでしょう。
この漫画に関しては客観目線で読めることが少しうらやましいです。
ぼくには無理。
「テツの大切な妹」がポッと出男に奪われたのではなく、「ぼくの大切な妹」が奪われたのです。
急に現れてカスミを横取りするガキはお兄ちゃんが許さんわ...(ブチギレ)
っていう気持ちになった。
まさに漫画の中のテツそのまんま。
たしかに、客観的に見れば七瀬はカスミを単なるマスコット・アイドル的に表面上だけを崇拝する他のゴミクズ同級生男子どもとは違って「しっかりコミュニケーションをとったうえで」好きになっている。
七瀬がカスミを大事に思う気持ちは本物なのは分かる。描写から理解できる。
でも、ぼく(主人公テツ)にとってはもう妹のカスミの存在が自分の生きる目的になっているんですよね。
幼い頃に大好きだった母親を無くし、あまりの絶望に一時期はカスミをほったらかしにしてしまった後悔から「最強にカッコいい兄」でありつづけることを自分自身に誓ったテツ。
いつも「カスミのため、カスミのため」と言いつつ究極的には自分のため。そうしないと自分の存在意義がなくなってしまうから。
つまり、カスミが七瀬に惹かれて離れていくということは、テツからすると自分の存在意義が無くなってしまうことにつながるわけですなぁ。
以下が「カスミ=テツの人生そのもの」という価値観を象徴しているコマでした。「あぁ...とうとうそれを言ってしまったか...」と。ツライ。
出典:りぶねす コミックス10巻第57話
それ、言っちゃアカンやつ・・・
でもこれは、カスミ目線で見るとちょっと恩着せがましくてキツイ言葉だなぁ...とも感じました。
テツの慟哭を聞いたカスミの表情も絶妙に微妙です。。。
テツにはこういう言い方をしてほしくなかったけど、ついポロッとカスミ本人にこのように言ってしまう程七瀬の存在に精神を追い込まれているテツの気持ちも痛いほど分かる。
分かるのがまたツライ。
とまぁ、カスミが七瀬を意識し始めるころには、読者であるぼくは「完全にカスミに依存した中毒患者(テツ)」そのものになりきっているので、七瀬じゃなく誰が相手でも「カスミが好きになる男は絶対に受け入れられない」となったのだと思います。
ほんと、こんなに胸糞な感情を覚えたのは久しぶり。。。
メモ:
リアルに妹がいる男性がこの漫画を読んだらまた違う感想になるのかなぁ...と想像してみたり。
2. 七瀬のテツに対する口のきき方が不愉快だから
もうひとつ、七瀬が嫌いな理由はシンプルに「年上であり、カスミの実の兄であるテツによくそんな失礼なタメ口きけるね?」という点。
七瀬の態度、悪すぎませんかね。クソガキやんけ。好感度のかけらも湧かんわ。
出典:りぶねす コミックス11巻第59話
(#^ω^)うざ
これらタメ口はかなり違和感を覚えました。しかも、カスミの前でもこんな喋り方しちゃうのよ。
七瀬はもともと口調は誰に対してもぶっきらぼうであること、テツが七瀬に対して喧嘩腰なこと、この2点を加味しても「茶番なんてやめましょう。〜仕方ないんじゃないですか?」と言えんのかと。
このあと「こないならこっちからいくぜぇぇぇ!」とか半狂乱で殴りかかってるし。
七瀬を「モブキャラ」と呼んでしまいましたが、メインヒロインであるカスミをかっさらう役割としては魅力が足りなすぎます。
「あぁ、君なら妹を任せられるわ...」っていう納得感が全くないんですよね。
「カスミ目線だけで見るなら」七瀬はまぁ魅力的なんですが、やはりテツ目線で読んでしまうとどうも「邪魔」につきる。
コイツまじで邪魔なんだよなぁ...。
- 七瀬振られるif
- 七瀬がもっと好感度良好な少年if
どちらかだれか書いて。
3. テツと七瀬が上手くやれる未来が見えないから(カスミは幸せなのか?)
結局七瀬とカスミが付き合い始めるわけですが、七瀬とテツの性格があまりに合わないような気がします。
この先、七瀬+カスミ+テツ+アスカで4人仲良くできる日が想像できない。
カスミはテツから離れるつもりはないというが、七瀬とテツの間を取り持ったりしてめっ..............................ちゃカスミが苦労しそう。
カスミ中毒すぎるテツも悪いが、ポッと出に見える七瀬ばかりにここまで強いヘイトを向けてしまう自分がちょっと嫌だ。
わかってる。
テツと七瀬が上手くやれないのは七瀬だけが悪いんじゃないのは分かってる。
でも、テツになりきって読んじゃったぼくはもう
七瀬のやろうが憎くて憎くてしょうがねぇ...
のです。
七瀬は「お兄ちゃんより凄い人」だった
モヤモヤがおさまらないので、いったんテツ目線は置いておく。
頑張ってカスミ目線で七瀬を見てみる。
1巻では、いかにテツが知能的・肉体的に超人的な能力を持った完璧人間かを読者に見せつけたあと、カスミが
私お兄ちゃんより凄い人じゃないと多分ときめかないなー
と言い放ちます。
これ、お兄ちゃんより凄い人が現れてときめいちゃうフラグだったんですね。
1周読み終わったあとで「七瀬はお兄ちゃん(テツ)より凄かったのか?」を考えてみたんですが、読み返すと「そういうことだったのかー」と。
普通は1周目読んでる最中に気づくのかな。
七瀬には、テツにない「自分の夢・人生の目標」があった
七瀬もテツ同様に自分の妹を溺愛しており、生きがいだったサッカーを辞めてまで妹の面倒を見なければいけないという「どこかテツに似た境遇」を持っています(テツは人生をかけて妹の面倒を見る覚悟を持っている)。
七瀬のルックスがあからさまにテツに似ているのも「カスミはお兄ちゃんみたいな人が好き」という暗示なのかも。
という共通事項がありつつも、テツと七瀬には決定的に異なる部分が。
- テツには、自分自身の夢・人生の目標がない(妹の世話をすることしか見えていない)
- 七瀬には、「絵本作家になる」という夢ができた(妹の面倒をみることを通して見つけた)
出典:りぶねす コミックス9巻第50話
あー、惚れちゃったねこれは...
「ちゃんと将来やりたいことがあるなんて・・(七瀬君は妹ファーストながら自分のことまでしっかり考えてて、うちのお兄ちゃんより)すごいね・・!!」
...というふうに読みました。
境遇はどこかテツに似ている七瀬ですが、テツには具体的な夢・人生の目標がなく「カスミの大学の教員にでもなるか」なんて言い出す始末。
七瀬から「自分は絵本作家になりたい」と打ち明けられたこの瞬間、曖昧な好意から初恋へと変わったのかなぁと想像します。
カスミ目線では、七瀬は他人を大切にすることだけでなく「自分自身の夢を持ちそれも大切にできる=兄よりすごい人」と映ったのでしょう。
りぶねすの好きなところ
嫌だ嫌だというだけではフェアではないので...
テツはカスミを妹として見ていること(異性として見ていない)
テツはカスミを完全に家族として接しているのが安心できます。
たとえば「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」みたいに「妹と露骨なラッキースケベ」がなく安っぽいエロに走らないところは評価できる(超好きだけどね。俺妹も)。
また、本当に妹が大切だということが伝わってくるし「妹大切さゆえの俺最強」設定も漫画的に良いなと思いました。
嫌味っぽいところが無い好感の持てる主人公なのが、読んでいて気持ちよかったです。
ラブコメが面白いかどうかは主人公の好感度で8割がた決まる。
短髪なのに可愛いアスカ
ぼくは髪型がショートカットというだけでそのキャラが嫌いになってしまうくらい黒髪ロングストレート好きですが、アスカはキャラが破壊的に可愛いかった。
冗談抜きで、個人的ショトカ女子キャラ可愛いランキング歴代1位です。
おバカなのに可愛いのりちゃん
のりちゃんも人気投票したらカスミ、アスカの次を狙えるんじゃない?というくらい可愛いですね。
出番の頻度の割に、のりちゃんファンはたくさんいそうな気がする。
まとめ:間違いなく面白かった。でももう読まない
冒頭でも書いた通り「先が気になって気になって読む手が止まらなかった」という意味では間違いなく面白かったです。
だって、こういう風にブログで漫画感想記事を書いたの「りぶねす」が初めてだしね。
というか、こんな感情をガシガシゆさぶるようなストーリーを描ける堂本先生すげぇ。本当に何度頭をかきむしって半狂乱になったことか。
それくらい印象深い作品ですが、読み返すとまた七瀬にモヤモヤイライラしてしまうので、もう一周読むことはこの先あるだろうか...?というのが正直なところ。
読まないというか「(気持ちよく)読めない」というか。
アニメ化したら喜んで見ちゃうけど。というかアニメ化希望。
りぶねすの由来が「leave nest(リーブネスト)」=「巣立ち」だったことに気付いた時はちょっとしたアハ体験をさせてもらった。
口直しに:新作をどうぞ
気分を立て直すため、堂本先生の新作「ネクロマンス」に手を出してしまいました。
読後の喪失感を埋めるためには仕方なかった。
さらに画力が上がっていて、女の子たちが可愛いのなんの。りぶねすに負けず劣らず面白いのでとてもおすすめです(5巻で完結済み!)。
ネクロマンス完結後の最新作「愛してるゲームを終わらせたい」もどうぞ。